136kekka_head  

秋の演劇祭、劇づくりの主戦力は2年生 ?

 今回の演劇祭は、残念ながら、全体にやや低調という印象でした。
ここ数年、いやもっと前からかもしれませんが、秋の大会は各校3年の出演が
減少し、さながらスポーツでいう新人戦の様相を呈しています。
以前なら、秋祭は演劇夏季学校を経験した3年生が久しぶりに再会し、夏季学
校での学習や経験の上に自分たちで創作してきた作品を評価し合う、そんな熱
気を感じさせたものでした。
 しかし、最近は劇づくりの主力は2年生に移っているように思われます。
厳しくなった大阪の受験戦線がもたらしている結果なのだとしたら、とても残
念なことと言わなくてはなりません。
 もちろん、それでも、顧問の先生方や夏季学校を経験した1・2年生たちの
がんばりで、すばらしい作品や演技を見せてくれた学校も少なからずあったの
はとてもうれしいことでした。


演劇部員のみなさんへ (審査員が伝えておきたいこと)

 今回の演劇祭でも採点が難しい場面が多くありました。審査員が変われば、
異なる結果になったかもしれません。
観客に何を伝えようとしているのか。登場人物は何を思いどう変化したのか。
心の闇はどう表現されたのか。舞台から発信されるすべてのものを、聞き逃さ
ぬように見逃さぬようにと、一生懸命受信に努めました。
見せ場のポイントを押さえ、引き込まれる作品も多くありました。        大阪市立 城東中演劇部「素直になれたら…」の舞台より
技巧の素晴らしさ以上に、中学生たちのひたむきさに心打たれることも多くありました。

    舞台の道具や流れる音楽、脚本と役者の演技等、さまざまな要素がとけあい、思いがけない化学反応を起こす場
    合もあります。それらはおそらく練習を重ねて、なおもそれに満足せず、よりよい演劇を目指す者たちの心地よ
    い緊張が背景にあるからではないでしょうか。
    演劇祭の舞台は、その時、その場だけ、刹那的ともいえるたった1回のナマ舞台です。劇を創る側も観る側も、
    共に素晴らしい魅力を感じられるよう、大人もまた次回に向けて心の熟成の準備をお願いしたいものです。


劇づくりで注意してほしいこと (閉会式での講評より)

【戯曲に関して】
・全体に、できごとや事件がおこっていない。設定ではなく、舞台上で何かが起こることが必要。
・本当は解決していないのに、「ごめんなさい」という言葉だけで仲直りする劇が多い。安易では?。
・厨二病、中二病といったキーワードが登場した。新しい問題意識として、今後、深めてほしい。
・いじめ問題を扱った学校が何校もあった。自分たちの問題としてしんどいことを扱おうとする姿勢が素晴らしい。
・アニメやゲームを題材にするのも悪くはないが、”まねごと”ではだめ。観客は敏感だから自分のものになっていな
 いと共感は得られない。

【スタッフワークに関して】
・歌詞入りの音楽や大音量の効果音が劇を潰している学校が多い。驚いて舞台から心が離れてしまう。
・必ずしも悲しいときに悲しい音楽、楽しいときに楽しい音楽をかける必要はない。映像とは違い台詞を潰してしま
 う場合もある。
・気分を盛り上げるために音楽を入れるのは簡単だが、切り時と切り方が難しい。フェイドアウトのスピード・きっか
 けを稽古の中で繰り返し練習しておこう。
・演劇祭の舞台は横長のなので、うまく両端の巾を切り、奥行きや高さを出す工夫をしよう。
・教室では、登場人物と机やイスの数が合っていないと気になる。逆に何か1つ足りないことに意味を持たせると演技
 に使える。
・装置と演技は密接に関わる。動きの邪魔になる大道具が置いてある方がよい。
・登場人物がみんな学校の制服だと人物を判定しにくい。最近は、カーディガンやベスト、靴下、ヘアースタイルなど
 で個性を出すなど、衣装を頑張っている学校が増えてきた。
・髪型で顔が見えない人が多いので注意しよう。ヘアースタイルは「自分」の髪型でなく、「役」の髪型を!
・靴のコツコツ音に注意。音を立てるのは、その音が劇の中で必要な時のみ。  ( 審査員の講評を中心に 秦記)

love

養精中(茨木市)、最優秀知事賞を初受賞・戯曲賞も
  最優秀朝日放送賞は旭東中(大阪市)

 審査の結果、最優秀知事賞は養精中演劇部が初受賞、最優秀朝日放送賞は旭東中演劇部が受賞しました。養精中は優れた創作脚本に贈られる戯曲賞もあわせて受賞しました。
 養精中の劇に出演したのは、全員この春入部したばかりの1年生とか…。緊張で身体が硬くなってはいたものの、それを上回る熱気で観客を引き付ける作品を創り上げました。顧問の先生のリードのもと、全員で劇作に取り組んだチームワークの良さがにじみ出る素晴らしい作品でした。
 旭東中は春に続く連続受賞。受け狙いの表面的な演技を排しつつ、静かに深く人間の温もりを描こうとする
劇づくりの姿勢に好感を覚えます。両校の今後の活躍を期待しています!!

受賞校は下の「審査結果一覧」↓をご覧ください。


line.jpg



上演を間近に控えた演劇部。
本番を前にしてユウキが練習に来なくなった。はぶられていた新田をかばったために、自分もはぶられしまったのだ。
ユウキの代役を練習で務めてきた萌絵は、「何で来たの!」と本番直前に登校してきたユウキを責める。その萌絵も、かっては悪口を言う側だったのだが、今ははぶられているのだ。
 なぜ、いじめはなくならないのか。
 集団の中に発生するピラミッド形の力関係と、その構造に無自覚に流される人間の弱さこそが原因と、この劇は主張する
「いじめちゃうもん。パンダやもん」と、いじめを言葉のすり替えでゲームのように軽く扱う描写は見事。その軽さが新たないじめを作り出していくのだとみんなが気づき始めていく。
 最後は、少し理屈っぽくなってしまったのが残念だが、間を大切にした落ち着いた演技が観客を納得させていった。
 部室に置かれていた舞台装置としてのピラミッドが最後に撤去されていくが、テーマを象徴的に表現していていい。

最優秀府知事賞
「 人の痛みなんて分からない 」

    養精中学校 演劇部  作/演出:清水陽子・演劇部
養精中「人の痛みなんて分からない」
  養精中演劇部「人の痛みなんて分からない」の一場面

最優秀朝日放送賞
「 それって、晩ごはん? 」

  旭東中学校 演劇部   作:西川ミチル  演出:演劇部
旭東中「それって、晩ごはん?」
   旭東中演劇部「それって、晩ごはん?」の一場面


「取調室におるんやろ、亮子!」
 何がおこったのかと思わせる幕開き。末の妹・亮子の家出が、家族の間に複雑な波紋を広げ始める。家出の原因を探るなかで、姉の梨々花や野々花と妹の亮子の名前が違うこと、その由来とそれぞれの思いも次第に明らかになっていく。
 登場しない亮子の立ち位置が、劇の進行とともに脇役から主役へと少しずつ変わっていく様が生き生きと表現された。もう少し台詞を削って”間”を作れば、より深まったかもしれない。
 機械的にセリフを言うのではなく、相手役の言葉をよく聞いたうえで、それに対する反応としてセリフが話され動きや感情表現が生まれるという、対話の基本をきちんと押さえて演じられている。だから、姉妹の喧嘩・母の仲裁・同級生との関わり等、それぞれの感情とその背景がよくわかり、力みのない自然な演技となって迫ってくる。座ったままの場面が多いのに、観客を引きつける理由がそこにある。
 冷蔵庫の作りが素晴らしくドアを開けたら物が入っていて、ドアポケットまで作られていたのは感動的。

line.jpg 


第136回 大阪府中学生演劇祭 審査結果

受 賞 内 容 受 賞 校 受 賞 作 品 名
 最 優 秀 賞
 府知事賞
 茨木市立 養精中学校  人の痛みなんて分からない
 最 優 秀 賞
 朝日放送賞
 大阪市立 旭東中学校  それって、晩ごはん?
 優 秀 一 席
 府議会議長賞
 私立 東海大付属仰星中  僕が死のうと思ったのは
 優 秀 二 席
 府教委賞
 大阪市立 城東中学校  素直になれたら……。
 優 秀 三 席
 日本教育新聞賞
 私立 関西創価中学校  愛 don't like me
 優 良 賞
 朝日放送賞
 大阪市立  阪南中学校  帰宅部活動計画
 優 良 賞
 日本教育新聞賞
 堺市立 陵南中学校  ありがとう
 優 良 賞
 演劇協会賞
 (上演順)
 私立 清風南海中学校  いつかこの夕暮れで
 私立 帝塚山学院中学校  檸檬
 大阪市立 友渕中学校  想いをアメに込めて
 佳 良 賞
 演劇協会賞
 (上演順)
 大阪市立 桜宮中学校  炭酸 ー失われたものー
 八尾市立 曙川南中学校  魔女との契約
 大阪市立 住吉中学校  それでも僕らは反省しない
 私立 近畿大付属中学校  ウワサのベンチ
 戯 曲 賞    茨木市立 養精中学校  清水陽子・養精中演劇部
 「人の痛みなんて分からない」


このページの Top へ