自分発見の4日間、仕上げは「卒業公演」


脚本作り2
 合宿一日目、早い座は脚本づくりの相談を始めています

脚本作り1
  どんな劇にする?  ストーリーは? 人物は?

夏季学校で予定されている講座を受講している間も、座長の心の中では、常に講座とは別に卒業公演のことが重くのしかかってきます。
 刻々と迫る公演までに、座長として座員を率いて、劇創作という大きハードルを乗り越えなければならないからです。
 合宿2日目の夕食後、卒業公演に向けての具体的な「劇づくり」の講義がありました。

脚本作り4
 自分の悩みを出し合い、共感できるテーマを探します

劇づくりのグループ「座」ごとに、いきなり劇づくりがどの程度できているかを尋ねられます。ここまでの間に、劇づくりの準備をすることなどはほとんど指示されていません。夏季学校ではあらゆる場面で自主性が重んじられます。指示されて動くのではなく「自分で必要なことを考えて、動く」のです。「卒業公演」のことは、夏季学校の説明会を受けた時からわかっていたこと。次々に『座』ごとの報告が発表されていきます。全く何の準備もできていない座。もうすでに脚本のストーリーが固まりつつある座……。
                                              
 夏季学校の経験が少ない私が「夏季学校に来る前から脚本を考えてきたら楽なのでは?」と講師の先生に
質問すると、先生はニヤリと笑みを浮かべ「それがそううまくいかないんや…」と。
つまり、「座員」は夏季学校に来て初めて出会うメンバーで、その個性も見ずに作ってきた脚本では場に合
わないことがある、というのです。

脚本作り3
「それで行こう!」と決まると鉛筆が動き始める

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      みんなで意見を出し合います

講座「脚本創作」を担当された秦先生の言葉を引用すると、「脚本を書こうとする時、今自分が何に気持ちを傾けているかを知る」ことが大切とあります。 
 誰にでも、今伝えたい何かがあるはずです。共感しない脚本づくりでは、劇づくりはなかなかうまく進みません。

脚本作り7
   議論がゆきづまってしまうこともしばしば…

運よく、話がすぐにまとまってストーリーが進みだしても油断はできません。
知らない者同士の「座」、脚本とは全く関係のないもめごとが起こってくることもあります。日常ではない気持ちの高ぶり、そうかと思えば、うまくなじめない自分へのいらだち、落ち込み。中には泣き出してしまう人もいます。そしてそれを慰める座員たち。
 けれども、自分たちが、今しなければいけないことを忘れてはいけません。みんなで「作品」を作り上げなければいけないのです。

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   作品はコピーして綴じられ、脚本、完成です!

深夜になりました。   
今から24時間もしないうちに、嫌でも「卒業公演」の発表の時がやって来ます。
事務局の先生方は、この山の上へ特別に搬入したコピー機の前でずっとスタンバイしています。脚本が仕上がり次第、台本として印刷するためです。
 座長を中心に、経験のあるメンバーはプレッシャーを感じています。丁寧に作るあまり、どんどん時間だけが過ぎていきます。
あまり事情の分からない新メンバーの中には、どう参加すればいいのか
  わからず、おしゃべりしたり、ふざけたりする人も出てきました。
  そして、とうとう座長から先に寝るよう言われてしまいました。

     深夜の廊下。ふと見ると、深刻な表情で話している生徒がいます。
      聞けば、下級生は体調を崩すといけないので、先に寝るようにと言われたけれど、
      どうしても劇づくりの場にいたいとのこと。
      その強い訴えに先輩も納得し、彼女は再び、脚本作りに参加できました。

 さあ、今日は朝から立稽古やで!

脚本作り9
  「だるまさんが転んだ」の罰ゲームはセクシーポーズ!

翌朝、眠たい目をこすりながらも朝の集いに全員参加します。
眠気覚ましにOG・OB先導で、「だるまさんがころんだ」をします。
昨夜悩んでいた人も、泣いていた人も、一緒になっておもいきり参加します。最後は演劇部ならではの罰ゲーム「セクシーポーズ」が披露された頃には、今からほぼ1日かけて「作品」に取り組む覚悟が湧いてきました。

3日目朝、ひとつの座を除いて脚本が完成したようです。朝食をとりながらセリフを覚えている座があります。それを見て、焦りまくっている座もあります。
    この日は「講座」も「実習」もないので、ひたすら劇づくりに集中できます。
    脚本はまだまだ、推敲したいけど、まずは立稽古を優先。修正は稽古しながら役者の動きに合わせ
    て書き直していこう。

立稽古1
          まずは脚本を持って半立ち稽古

立稽古2
  セリフが入ってないので、たびたび中断します

立稽古3
               体育館裏も稽古場?

立稽古5
          練習を中断して、話し合い?

立稽古4
        この座はもう脚本を離して練習しています

ほとんどの宿泊者は、登山やオリエンテーリングなど野外活動をしているので、昼間の「曽爾青少年の家」はまるで演劇夏季学校の貸切状態。
 卒業公演の主会場となるプレーホールはもちろんのこと、玄関ホールや、階段上の踊場、風呂の前、会議室など、練習場所はあちこちにあります。         
各座は思い思いの場所を選んで練習に取り組みます。朝、脚本ができていなかった座も、午前中には完成し読み合わせを始めているようです。
 
       どの座も順調に練習が進んでる…? ように見えますが、案外そうでもないようです。
       セリフの解釈を巡って激論している座があれば、棒立ちのまま動けない下級生や、
       舞台慣れした上級生のオーバーアクションを巡って演出の座長と意見が対立している
       座もあります。どの座も真剣そのもの、上演が楽しみ。

                  

 いよいよ卒業公演です                

卒業公演プログラム
     卒業公演 プログラム

夕食後、とうとう「卒業公演」本番になりました。
 先ほどまで練習していたプレーホールは、どこからか照明や音響の機材が持ち込まれ、セッティングされ、いつの間にかすっかり「舞台」に変わっていました。
今まで知らなかった他の「座」の作品タイトルにドキドキしながらも、みんなが今の自分の精一杯を賭けて、自分たちの「座」で作り上げた作品を発表します。

上演されるのは、中学生の劇が9本、OB座の劇、OBプラス先生座が各1本、計11本! 
上演時間は3時間を超える長丁場です。
会場に集まったみんなの顔は、緊張でこわばっています。おし黙ってじっとプレッシャーに耐えている人、
興奮してしゃべりまくる人などさまざま。

    午後7時、卒業公演の開幕です! 

佐々木座
        佐々木座「かくす?かくさない?」

星田座
      星田座「クラウチングスタート」

岡崎座
      岡崎座 「 道 」

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卒業公演は、プログラム1番の佐々木座の「かくす? かくさない?」から始まりました。
演じる側も、観る側も、みんな真剣に舞台に集中しています。
照明や音響効果が舞台効果を盛り上げてくれます。あらかじめ提出したプランに基づき、OB/OGたちが裏方を引き受けてくれているのです。 
公演が終わると暖かい大きな拍手が送られます。会場は無事演じきった人たちの開放感と、上演が近づく人たちの緊張感とが交差しながら、心地よい暖かさに包まれています。

田部座
       田部座 「七人七色 」

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清水座
       清水座 「キャラメル 」

長谷川座
       長谷川座 「青い傘 」

野里座
       野里座 「STEP! 」



森本座
       森本座 「変化の目印 」

草刈座
       草刈り座 「タイム 」

中学生9座の上演が終わったところで休憩時間。


 緊張から解放された中学生たちが、やりきった充実感に満たされながら、自分と仲間たちの健闘を称え合い、あちこちで手を取ったり抱き合ったり……。
   感激のあまり涙をあふれさせている子もあちこちにいます。会場の雰囲気がはじけるように明るくなりました。
   今回の卒業公演では、多くの座が学校・家庭など身近かな暮らしの中から題材をとり取り上げていました。
   ともすれば、道徳的な結論に終わりがちなテーマを扱いながらも、どの座の作品にも、問題を深く掘り下げよう
   とする姿勢がみられました。
                
 休憩後は、みんなが楽しみにしていた高校生や大学生、そして先生方が加わった劇が上演されました。

子吉座
       子吉座(OB+教師) 「秘密 」

村上座
       村上座(OB) 「2+1 」

この3日間、自分たちの周りでさまざまに、サポートしてくれていたOB/OGたち先輩に、いつ練習の時間があったのかと驚くほど、クオリティーの高い作品が次々と上演されました。
 あんな作品が書きたい、あんなふうに表現してみたい、それよりなにより、やっぱり演劇っていいなと思う面白さ、興奮。
こうして「卒業公演」は幕を閉じました。


    次の日。前夜発表された公演に対して講評と表彰が行われます。
   賞状と記念品のA4ノートには大きな演劇夏季学校のハンコが押してあります。
   明日からは、このノートに作品を書いて、秋の演劇祭の脚本に仕上げたい…。
    そんなことを考えながら、今年の演劇夏季学校も終わります。(湯口)

9つの座すべてが演じ終えたあと、その夜に、先生たちが審査の協議に入りました。
   どれも甲乙つけがたい各演目でしたが、協議の結果、次の作品が入賞しました。

第1位 清水座「キャラメル」

 6人が順番に登場し一言ずつしゃべり、それぞれの場所につく幕開きが目を引いた。
  演劇部を舞台に、はじめは気持ちがバラバラの部員たちが、主人公の陰の努力を知り
  心が通じ合う物語。キャラメルのようなふんわりとした甘さに包まれる作品。
  実習「舞台装置づくり」で作製したテーブルや椅子などの大道具類を巧みに使った。

第2位 草刈座「タイム」

星田座「クラウチングスタート」

 陸上部を舞台に、努力の大切さをユーモラスにえがいた作品。
  自分の努力は実らないものだと決めつけていた主人公が、応援する部員たちに最後に
  言ったことば、
  「『ありがとう』と『ごめん』― どっちを先に言ったらいいかわからん」が印象的。

第3位 森本座「変化の目印」

 2人の主人公を通し、姉妹の問題が上手に描かれている。周りを変えるには人を頼り
  にせず、自分から変わらないといけないことに気付かしてくれる作品。
  優しい台詞と演技が印象的。



審査対象外の作品でしたが…

OB村上座「2+1」

 夏祭りを舞台に、兄が妹に振りまされながらも恋人とデートをする姿をユーモラスに、
  また詩情豊かに描いた作品。

OB小吉座「秘密」

 学校の教室を舞台に、今は妙齢になった主人公達の学生時代の恋をユーモラスに、
  またダイナミックに描いた作品。

 
   若者らしい身近な感覚で、ユーモラスで情緒豊かに仕上げたこれら2作品は、主題の取り
  上げ方や描写方法など、現役生たちにとってとてもいい刺激、手本となりました。
  更に、彼ら・彼女らたちは、演劇夏季学校全体のスタッフの仕事も担いながら、現役生た
  ちをしっかりサポートし、創作・表現活動『演出』での学習のための劇、そして、自分た
  ちの座の劇をもやりきりました。
   今回も彼ら・彼女たちの超人的な活躍に支えられて演劇夏季学校の成功があったことを最
  後に付け加えておきます。

 ありがとうございました!                                                             (米沢)